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日本の長時間労働は、利便性を追求する客が問題なのではない。

今年、電通の事件をきっかけに、「ブラック企業」というキーワード、さらにそこから一歩踏み込んだ「なぜ長い労働時間は改善されないのか」、さらには「お客さんのサービスに対する過度な要求が原因なのではないか」という議論が私のソーシャルネットワークのタイムラインに溢れかえっています。

 

たとえば、こんな記事とか

www.asahi.com

 

こんな記事とか

www.newsweekjapan.jp

 

こんなのとか

toyokeizai.net

 

同時に、海外の状況もいろいろ共有されてきます。

よく出てくるのはドイツの例です。

 

 

ここまで様々な方のご意見に触れてきましたが、でもなんかしっくりこないのです。

なんでだろう?とずっと考えていました。今回は、西欧に住み海外相手に仕事をしてきた私の個人的な観点から、いくつか思うことを書いてみよう、と思い立ちました。

 

いろんな方の意見に触れてまず思ったのは、いろんな議論がごちゃまぜになっているなあ、ということです。まず少し整理してみたいと思います。

 

ブラック企業の定義】

厚生労働省によると、概ね以下の3つの特徴だそうですね。

① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す

② 賃金不払残業やパワハラが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い 

③ このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う


参考:「ブラック企業」ってどんな会社なの?|Q&A|確かめよう労働条件:労働条件に関する総合情報サイト|厚生労働省

 

昨今の議論の論点は主に①の長時間労働ですね。

 

長時間労働の実態について】

以下のリンクは、古い記事ですが、いろんな要因が綺麗にまとまってますね。

jinjibu.jp

 

母体数と質問した相手がわかんない統計なので信憑性は「?」だけど、
グラフで見ると、こんな感じ。

f:id:fatheringinbarcelona:20161129104103p:plain

 


これ、大きくわけると

・社員が自ら残りたい

・帰りたいのに帰れない

に大別できそうですね。

 

前者のほうは、実は「帰りたい」という感覚がもう麻痺していたり、

もともと帰れるという世界にいたことがなくて、

「動物園の動物たちは何が何だか死ぬまでわからない」という

ブランキージェットシティの歌詞に出てくる状況なのですがwww

それはさておき

ブラック企業の定義にそって、「帰りたいのに帰れない」について

見てみましょう。

 

【なぜ帰りたいのに帰れないのか、というか、なんで仕事多いのか】

一番割合の高い「仕事量が多い」にフォーカスして考えを進めてみます。

 

「社員ひとりあたりの仕事量」=「全体の仕事量」÷「投入リソース(人+時間)」

という単純化した数式で考えてみると、結構簡単な話で、

社員ひとりあたりの仕事量を減らすためには、
分子を小さくするか、分母を大きくするかしかないわけです。

 

でも、実際はだいたいこんな感じ。

・(分子)無駄な仕事を無駄だとわかっていても減らせない

  →いや、減らせばいいじゃん!

・(分母)特定のアウトプットを出すための仕事量に対して人が足りない

  →限られた人材が多くの時間を投入するしかない
  →仕事減らせないなら人もっと雇うか機械で自動化すればいいじゃん!

 

こんなシンプルな判断ができないのは、なんでなんでしょうねえ?

企業努力(=コスト削減による値下げ)はわかりますけどね。

 

【(分子)なぜ仕事が減らせないのか】

さて、やっと冒頭の議論に帰ってきます。

・「過剰なサービス要求」が原因じゃないのか?


ここで、僕のタイムラインで拝見する他の方々の議論は
2つの議論がごちゃまぜになっている印象を受けます。すなわち

①サービスの対価に関する議論

②利便性・サービス品質を追求することの是非を問う議論

の2つです。

 

①サービスの対価に関する議論は、「お客様は神様である教」の信者が、サービス(商品に付随する"Intangible/無形"なもの)は無料であるべきだ、という議論で、これは、まあ、顧客に提供される価値とその値付けの問題ですね。これについては、本来、労働時間とは独立の問題(であるべき)だと思うので、今度別のエントリで議論したいと思います。

 

このエントリで、私が特に議論したいのは、そう、

「②利便性・サービス品質を追求することの是非」

です。

 

(ああ、ここまでくるのにこんなたくさん書いちゃった。お付き合いください^^)

 

さて、よく目にする議論は:

「ヨーロッパは日曜日休みだよ。日本も不便さを受け入れてでもそうすべきだよ。」

みたいな議論ですが、私はこの結論は違うと思っています。

 

なぜか。

 

欧州に住むとよくわかりますが、

やはり便利な日本は素晴らしいですよ?

 

・コンビニが24時間営業してて、だいたい何でもすぐに買えて

・郵便は翌日(どんなに時間がかかっても2日以内には)だいたい確実に届き

・公共交通機関は時間通りに動き

・24時間おいしい牛丼やラーメンが食べれて

・どこのお店も、だいたい接客はすごく丁寧にしてくれる

 

こんな素晴らしく快適に過ごせる国が世界のどこにあるというのか(笑)

Quality of Lifeランキングで、東京は世界ナンバーワンです。

 

www.forbes.com

 

 

全て、日本人が、利便性を追求してきた結果だと思っています。

私は、利便性はもっと徹底的に追求すべきだと確信しています。

なぜなら、便利であることで、時間を無駄にしなくて済み、

人生を楽しむ余裕をもっと得られるからだと考えるからです。

 

欧州はなぜ日曜日が休みで、誰も文句も言わないかというと

そういう宗教だからです。ただそれだけの話です。

みんな日曜日は不便だと言っています。

日曜日に開いている店はお客さんがいっぱいいます(笑)

欧州でも、日曜日の買い物やサービスに対する需要はすごくあるのです。

でも文句を言えない。それは神に対する冒涜だからなのだと。

 

そう、利便性そのものが問題ではないのです。

便利であることは、みんなが求めることであり、悪いことであるはずはありません。

その利便性を追求する今の日本企業のやり方に問題があるのだと思うのです。

 

では、何が問題なのか?

 

・全方位で品質を高めようと頑張る

・1年間不休で営業

・値下げの企業努力

これら自体は何も悪いことだとは思えません。

 

企業も過酷な競争にさらされています。

サービス品質、価格、いずれも競争戦略の大事な要素です。

 

普通は、全部やると持たないので、「捨てる」必要があります。

すなわち、特定の領域に尖っていくサービスです。

・価格を追求する企業はサービスの品質を妥協する(例:格安飛行機)

・品質を追求する企業は価格を高く設定する(例:成城石井

 

こういうことができない企業がブラックと呼ばれてしまう道に進むのかな、と。

 

たとえば、こんな感じじゃないでしょうか?

 

・下請け系で大企業からの圧力に苦しんでいる企業

 →言うこと聞くしかない隷属関係だと、何もしようがないですよねえ。

 

・特にマーケットセグメントの取捨選択を行わず、国民全員を相手にしている企業 

 →大手メディア関係、食品・飲料系の会社とか、コンビニ、スーパーマーケットとか、ですかねえ。

 

大きな企業でもビジネスユニットがしっかり別れていて、それぞれにちゃんとした戦略があるとされているTOYOTAのような企業はさしてブラックな印象がないですよね。

(まあ、下請け企業が苦労しているというというオチもあるかも?実態はわからないですけどねー)

 

さて、戦略は「具体的にどう実現するか」、という手法論に落とし込むところまでできないと意味がありません。絵に描いた餅、口だけの戦略では、意味がありませんよね。

 

ということで、各社、作戦の実行をがんばるわけです。でも、今は、その実行にかかるコストのしわ寄せが、マニュアル労働者にかかっている構図になっていることが多いと思うのです。

 

さて、ここで議論が2つめのポイントにつながります。

 

【(分母)特定のアウトプットを出すための仕事量に対して人が足りない】

・全方位型で品質を高め

・休まず営業し

・しかも値下げする(価格競争突入)

・上記の売り上げ計画に沿った成果を出すためのマネジメント業務

 

となると、リソースがたくさん必要になることはサルでもわかります。

こんなの、やること圧倒的に多くなるのは自明ですよね。

しかも、価格競争な状況だと、新しく人を雇う余裕なんか、ないですよねー。

 

会社によっては、上司説明の打ち合わせがいっぱいあったり、

他の部署の仕事待ちなどの、無駄な時間、無駄な仕事も圧倒的な量であるはずです。

 

でも、

・日本は超高齢化社会で、若い労働力が減っている。

・昭和の終身雇用モデルなので、人材の流動性が低い

・日本国のポリシーとして、移民に厳しい

ということで、人をひっぱってくるのすら大変です。

 

どうすればいいんでしょうね?

 

どうすっか、というと:

a) 海外から安い労働力を引っ張ってくる(移民規制緩和

b) 高齢化社会を活かして働きたいお年寄りが働きやすい制度を作る

c) 他の会社の余剰人員を引き抜いてきやすいような制度を作る

d) 機械/AIを使って自動化し、人員不足をカバーする

という話になってくるとおもいます。

 

政治が確実に絡むa〜dの話は実現しなさそうだしめんどくさいので、

個人的には機械/AIが労働力をカバーするのが現実的じゃないかしら。

これはまた別エントリーで議論しようかな、とおもいます!

 

【まとめ】

長文におつきあいいただいて、ありがとうございました。

 

便利であること、利便性を追求することは悪いことだと思えません。

宗教も文化も違う海外モデルを盲目的に信じる理由は何もないとおもいます。

 

でも、利便性を追求すると、全体の仕事量は減らせない、というか増えます。

これは自然の摂理です。これを悪いとか良いとか議論するのがナンセンスです。

 

そして、今の日本の大部分において、その増えている仕事を実行する労働力を企業が調達する手段が限られているように見えます。私は、ここが根本的な問題だと考えます。

 

当然、与えられた仕事を処理する労働力が少ないなので

必然的に長時間労働になりますよね!

小学生でもわかるシンプルな仕事算の問題です。

 

 

これが、日本で今起きている長時間労働の正体ではないかと思うのです。